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田中純子 / 聖路加国際病院看護師/排尿機能コーディネーター 尿閉,頻尿,尿失禁などの排尿障害は,直接生命維持に影響を与えるような疾患ではない.しかし尿閉の場合,尿道カテーテルや清潔間欠導尿などの導入は,QOLの低下をまねき,患者の日常生活面に多大な影響を与える.したがって尿道カテーテル導入においては,適切なアセスメントが行われる必要がある.今月はどのような場合に尿道カテーテルの適応となるのか,そうなった場合の管理について解説いただいた.(編集部)

 

尿道カテーテル管理の指導

はじめに

 排尿は,人間が生きていくために欠かすことのできない生活行動の1つです.尿閉や頻尿,尿失禁などの排尿障害は,直接生命に関与する病態ではありませんが,人々の日常生活における活動性や精神面に多大な影響を及ぼすとともに,QOL(生活の質)の低下をまねきます.

 とくに,閉塞性疾患による「尿閉」は,尿道カテーテル*1の使用や清潔間欠導尿の導入など,排尿習慣の変更を余儀なくされ,患者の日常生活に大きな変化をもたらします.医療機関において尿道カテーテルは,術後や急性期の排尿管理のために日常的に用いられる方法です.しかし,安易なカテーテルの使用は患者に苦痛を与えるばかりでなく,排尿の自立の機会を奪う結果になりうることがあり,カテーテルを使用する場合には適切なアセスメントが必要です.

*1
「膀胱留置カテーテル」とも表記されるが,その場合,膀胱瘻によるものも含まれる.今回は経尿道カテーテルを中心に解説するもので「尿道カテーテル」で統一した

 今回は,どのような場合に尿道カテーテルが適応となるのか,そして医療機関における短期留置の場合の管理方法,在宅における長期留置の場合の管理方法の違いについて解説します.


尿道カテーテルの適応

 尿道カテーテルの使用は,術後や重症患者の排尿管理に用いる場合を除き,可能なかぎり避けることが望ましいでしょう.とくに自力排尿が可能な場合においては,尿道カテーテルの使用は不要です.医療施設では,尿失禁や時間ごとの採尿が必要な検査などを理由に,尿道カテーテルの挿入が行われる場合がありますが,自力で残尿なく排尿が可能なかぎりはカテーテルを留置する必要はありません(表1).

表1

 また,自力排尿が困難な場合においても,清潔間欠導尿の実施が可能な場合には,長期にカテーテルを留置せず清潔間欠導尿の患者指導を行うべきでしょう.尿道カテーテルには,尿路感染症や膀胱結石,尿道皮膚瘻などの合併症も多く,早期抜去を心がけるとともに留置の適応について慎重に考えることが重要です(表2).

表2

カテーテルの種類と選択

 尿道カテーテルには,さまざまな形状や材質,サイズがあり,患者の年齢や病態によって使い分ける必要があります(図1).医療施設で最も多く使用されているのは,バルン容量が5〜10mLの2wayのフォーリー型カテーテルです.血尿のため膀胱洗浄が必要な場合には,3wayカテーテルを用いると便利です(図2).しかし,管腔が3つになることにより内径が細くなり,カテーテル閉塞をまねきやすいという欠点もあります.

図1 図2

 また,前立腺切除術後など,切除部分からの出血が考えられる場合には創部の圧迫止血のためにバルン容量が20〜60mLのカテーテルが用いられます.男性患者で尿道狭窄などがみとめられる場合には,尿道走行に沿うように先端が曲がっているチーマン型カテーテルが挿入しやすいでしょう.

 市販されているカテーテルの外径は6〜26Fr(フレンチ)*2で,おもに小児には6〜10Fr,成人には12Fr以上が用いられます.通常は,成人の場合14〜18Frの物が選択されることが多く,血尿などによりカテーテル閉塞がみとめられる場合にのみ20Fr以上のものが選択されます.カテーテルの外径が太くなればなるほど患者の苦痛は大きく,尿道粘膜の圧迫壊死の危険性も高くなります.

*2
Fr(フレンチ):フランス式の太さの番号で1Frは1/3mm.12Frは直径4mm,14Frは4.67mm(14/3=4.67)の太さと考える.番号で1/3mmずつ増える.バルンの場合はその径は含まないので,注入するとバルン部分は管より大きくなる

 カテーテルの材質は,ラテックスゴムの表面にシリコンや親水性素材をコーティングしたものが一般的に用いられます(表3).親水性コーティングにより,尿道内の摩擦が和らげられ,尿道粘膜への刺激が少なくなります.オールシリコン製のカテーテルは,ラテックス製のカテーテルと比較し内腔が広いため,血尿や膿尿による閉塞が少ないことや,結石が形成されにくいという特長をもっています.しかし,ラテックス製とくらべて材質が硬いため尿道粘膜への刺激が強く,患者に尿道痛をもたらしてしまう場合もあります.また,銀の抗菌作用を利用した銀コーティングのカテーテルは,細菌の付着を低下させ感染に強いカテーテルです.しかし,ラテックス製のカテーテルと比較し,2倍以上のコストがかかってしまいます.

表3

尿道カテーテル管理の実際

短期留置の場合

 術後や重症患者の排尿管理に尿道カテーテルを用いる場合には,感染防止に努めることが重要です.尿道カテーテルの主な感染経路は,カテーテル挿入部,カテーテルとバッグの接続部,バッグの排液口です.

 尿路感染の発症メカニズムとしては,カテーテル挿入時における微生物の尿道内侵入,患者自身の外陰部からの感染,医療者の手指からの感染,さらに膀胱洗浄や検体採取時に生じるカテーテルとバッグの接続部からの感染があげられます(写真1図3図4).

写真1図3 図4

 尿道カテーテルによる尿路感染は,留置期間が1か月を超える場合,カテーテルの材質や管理方法に関係なく,ほぼ100%にみとめることが報告されています.尿路感染を防止するために最も有効なことは,可能なかぎり留置を行わず,間欠的導尿法やコンドーム型収尿器の利用などの代替法を用いることです.やむをえず留置が必要とされた場合においても,可能なかぎり早期抜去することが必要です.

長期留置の場合

 やむをえず長期留置を必要とする場合には,カテーテルやバッグが患者の日常生活の妨げにならないような工夫が必要です.蓄尿用のバッグは,患者の尿量や日常生活に応じて選択します.たとえば日中は歩行の妨げにならず,人目に立たないようなレッグバッグ(写真2)を用い,夜間のみ容量の大きなバッグを接続することも可能です.歩行機能に問題がない場合にはレッグバッグを下肢に装着することが可能ですが,高齢者など歩行機能障害がある場合には,肩かけ式のカバーのついたものやポシェットタイプを用いると,歩行時やリハビリ時などにバッグが邪魔になることもありません(写真3).レッグバッグは男性の場合には下腿に装着すると,尿を排液口から排出するときにズボンを脱ぐ手間が省けます.女性でスカートを着用する場合には,大腿に装着すると目立つことがありません.

写真2写真3

 陰部の清潔は,たとえカテーテルが留置されていても必要な行為です.バッグは装着したまま入浴することができます.公衆浴場などを利用する場合に,バッグが邪魔であればカテーテルプラグを一時的に用いて,肌色のテープで固定するといった,目立たない工夫をすることも可能です.

 カテーテルの固定にはテープが用いられますが,長期にわたるテープの貼用や,カテーテルの皮膚刺激によりスキントラブルが生じることがあります.テープは皮膚刺激の少ないものを選択し,毎日貼用場所を変えることが必要です.皮膚が脆弱な場合には,皮膚保護剤(写真4)や皮膚被膜剤(写真5)を用いることもよいでしょう.また,テープを用いないで固定装具を用いる方法(写真6)や,おむつや下着に紐やゴム,テープを用いて固定する方法もあります.

写真4 写真5 写真6

代表的なトラブルへの対処

 尿路感染以外の合併症やトラブルとしては,以下の項目があげられます.

膀胱結石

 膀胱結石とは,尿中に排泄された物質が結晶化して生じます.尿路感染をみとめる場合には,アルカリ尿に傾き,結石を生じやすくなります.

 対処としては,尿量を1日2,000mL程度は確保できるように飲水を促して尿を混濁させないこと,尿中の浮遊物が付着しにくいシリコンコーティングなどのカテーテルを選択すること,尿のアルカリ化を防止するためにクランベリージュースやビタミンCを摂取することがあげられます.

尿道損傷・仮性尿道(偽尿道)

 カテーテル挿入時に尿道内でバルンに固定水を注入したり,挿入困難時に無理にカテーテルを挿入したりすることにより,尿道損傷を引き起こし,本来の尿道以外の部分を傷つけてしまうことがあります.無理なカテーテル挿入は避け,専門医へ相談することが必要です.男性患者のカテーテル留置時には,必ずカテーテルの根元まで挿入してからバルンの固定水を注入します.

尿道皮膚瘻

 男性患者にカテーテル留置が長期化した場合に,尿道内の血行障害が生じ,尿道皮膚瘻が形成されることがあります.血行障害を引き起こさないように,カテーテルの固定は尿道の屈曲に合わせて「腹部」に固定することが原則です(前出図3参照).また,長期留置より膀胱瘻の造設で尿道損傷や,尿道皮膚瘻などのトラブルを避けることが可能です(図5).経尿道留置と比較すると,膀胱瘻のほうが尿道痛や膀胱刺激症状などの不快が少ないといわれています.

図5

膀胱刺激症状・カテーテル周囲からの尿漏れ

 カテーテルや固定水の注入されたバルンによる尿道や膀胱粘膜への刺激,細菌による感染が原因となり膀胱の無抑制収縮が誘発され,刺激症状やカテーテル周囲からの尿漏れが起こることがあります.

 カテーテルの屈曲や閉塞がないかの確認,カテーテルの材質を粘膜刺激の少ないものへ変更する,バルンの容量や位置を調整する,カテーテルの固定位置を変更するなどの対処が必要です.

 カテーテル周囲からの尿漏れに対して,カテーテルのサイズを太くすることは刺激症状を増強するばかりでなく尿道損傷のリスクを高めることになり逆効果です.尿漏れの原因が膀胱収縮によるものであれば,自尿を期待することもでき,カテーテルの早期抜去を検討することが必要でしょう.カテーテル抜去が困難な場合には,膀胱収縮を抑制する抗コリン薬や鎮痛鎮痙薬の投与も検討してみましょう.

カテーテルの抜去困難

 カテーテルの固定のためにバルンに注入するのは,通常“蒸留水”を用います.生理食塩液を用いると,食塩が結晶化して固定水が抜けなくなってしまう危険性があります.固定水が抜けずにカテーテルの抜去が困難になってしまった場合には,蒸留水を少量追加注入してポンピングを繰り返して閉塞の解除を試みます.

 バルン内の固定水を抜く場合にシリンジの内筒を強く引くと,固定水側のルートが陰圧になり閉塞をまねいてしまうことがあります.内筒を無理やり引かずに自然に固定水がシリンジに戻るのを待ちましょう.それでも固定水が抜けない場合,固定水側のルートを切断する方法やエーテルやトルエンなどの溶液をバルン内に注入してバルンを破裂させる方法,下腹部や会陰部などから経皮的に穿刺を行い,バルンを破裂させる方法などがあります.


おわりに

 尿道カテーテルは,急性期の水分出納管理や尿閉患者の排尿管理としては,大変便利な道具です.しかし,安易な尿道カテーテルの使用が患者のQOLを低下させ,同時に身体的・精神的な苦痛を与えることにつながることも忘れてはならないでしょう.尿道カテーテルは可能なかぎり早期に抜去することが重要です.やむをえず長期留置をする場合には,患者のQOLが維持されるよう一人ひとりに合った日常生活指導を行うことが大切です.


引用・参考文献
1) CDC:Guideline for Prevention of Catheter Associated Urinary Tract Infection. 1981.
2) 沼口史衣:尿道カテーテル関連感染とその管理.洪愛子編:感染管理ナーシング.Nursing Mook9,p.29〜30,学習研究社,2002.
3) 沼口史衣:尿路カテーテルに関連した感染,カテーテル関連尿路感染症(CAUTI).看護技術,47(4):35〜41,2001.
4) 沼口史衣:感染対策を支えるサーベイランス.看護技術,48(7):404,2002.
5) 深野磨奈美:エビデンスに基づいた尿道留置カテーテル感染の管理,INFECTION CONTROL,12(2):46〜50,2003.
6) 青木眞:尿路感染症,レジデントのための感染症診療マニュアル.p.228〜240,医学書院,2000.
7) 松本哲朗:尿路感染対策からみた膀胱留置カテーテルの管理.看護技術,49(7):20〜24,2003.
8) 高橋幸子:排尿自立を支援する手段−−膀胱留置カテーテル.吉川羊子監:Q&Aでわかる!排尿自立のポイント90.p.96〜125,メディカ出版,2004.
9) 田中純子:カテーテル留置時から始める排尿の自立支援.看護技術,48(2):73,2002.
10) 田中純子:尿道留置カテーテル挿入に伴う感染予防のエビデンス.BRAIN NURSING,20(11):29〜34,2004.

月刊ナーシング Vo.26 No.10 2006.9l

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